人間の赤ちゃんは生理的早産といわれます。生理的早産とは?
赤ちゃんは未熟?/ポルトマン 生理的早産説
赤ちゃんをもった方なら、誰もが「赤ちゃんって小さい」「ふにゃふにゃしていて頼りない」と感じたのではないでしょうか。
それは、ある意味正しい認識だと思います。
例えば、馬の赤ちゃんを考えてみましょう。
産まれた直後から自分の足で立ちます。逆に、自ら立つことができなければ、それは馬として生きていけないこととなります。
このことは、馬だけではなく、多くの動物に言えることです。
人間の赤ちゃんは、産まれても、立つどころか、自分の体も思うように動かせず、食事、排泄など生きていくための基本的な部分も誰かに頼らなければなりません。
このように、非常に未熟な状態で外界に出されてしまうため、ヒトは「生理的早産」(ポルトマン/Portmann, A., 1897-1982)とも呼ばれます。
どうしてヒトの赤ちゃんは、こんなに未熟な存在で出産されるのでしょうか。
ヒトは二足歩行を獲得し、手が自由に使えることができるようになったことで様々な道具を使いこなし、大脳が発達し、高度な文明を築くことが出来るようになったということは、みなさんご存知のことでしょう。
また、二足歩行によって赤ちゃんの通り道である骨盤が狭くなり、胎児の通れる大きさの限界ができてしまいました。
ヒトにとって大切な「脳」は大きくしたいが、母体から出られないのでは意味がない。
よって、手足などの器官をある程度犠牲にして、頭を出来るだけ大きくした結果、大人とは等身の異なる、頭が大きく手足の未熟な姿となったのです。
また、ヒトは外界にでてからの様々な環境に対応できるようになるため、それらの事柄を理解し、対応するため、生まれてからの学習が必要となってきます。
よって、あえて、出来上がった存在ではなく、与えられた環境に対して柔軟に適応することができる、つまり、赤ちゃんは「可塑性」をもった存在としてこの世に出生するのです。